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田沼意次が財政再建の切り札としていた「蝦夷地調査」

蔦重をめぐる人物とキーワード⑮


4月13日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回「死を呼ぶ手袋」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が念願の本屋を開業する一方、江戸城内で起こった一大事が描かれた。老中の田沼意次(たぬまおきつぐ/渡辺謙)はあらぬ疑いをかけられ、その対応に奔走する。


■次期将軍の急逝に江戸城が大きく揺れ動く

相良城跡に立つ田沼意次の銅像(静岡県牧之原市)。逼迫する幕府財政のため、田沼は1782(天明2)年から印旛沼の開拓に着手して米の増産を図っている。その翌年に献上されたのが、工藤平助の『赤蝦夷風説考』だった。

 愛する瀬川が去った悲しみが癒えぬまま、蔦重は吉原で本屋「耕書堂」を開業。朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ/尾美としのり)や北尾政演(きたおまさのぶ/古川雄大)といった仲間の明るさを前に暗い気持ちが晴れ、面白い本作りで吉原を盛り上げようという志を新たにした。

 

 その頃、江戸城では、将軍・徳川家治(とくがわいえはる/眞島秀和)の嫡男・徳川家基(いえもと/奥智哉)が急死するという事態に見舞われていた。険悪の仲と見られる田沼意次の陰謀という噂が城内に広まるなか、家治は意次と松平武元(まつだいらたけちか/石坂浩二)に真相究明のための調査を命じる。意次は、日頃から何かと衝突することの多い武元がこれを機に自身を追い落とそうとするのではないかと危惧する。

 

 家基の死因が毒殺だった可能性を探っているなか、意次のもとに平賀源内(ひらがげんない/安田顕)が訪れる。源内は蝦夷の調査を打診しにやってきたのだった。意次は、蝦夷(えぞ)の調査を検討する代わりに、源内に毒殺の場合の推理を依頼した。

 

 源内が調べたところ、家基が鷹狩りの際に噛んだ親指にはめていた手袋に毒が仕込まれていた可能性が浮上する。その手袋は、意次が大奥総取締の高岳(たかおか/冨永愛)に依頼されて種姫に贈ったものだった。手袋を取り寄せようとしたところ、武元がすでに入手したことを知った意次は愕然とする。

 

 窮地に立たされたと思った意次だったが、呼び出された武元に、将軍の後継者である家基の死を利用して陥れるような真似はしないと一喝される。常日頃、衝突を繰り返していた二人が、初めて意気投合する瞬間だった。

 

 二人は、家基の死で利益を得る勢力の存在に目を向け、いったん調査を打ち切ったように見せかけ、真犯人が尻尾を出すのを待つことで合意する。

 

 しかしその夜、何者かによって武元の屋敷から家基の手袋が盗まれた。屋敷には、事切れた武元が横たわっていたのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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